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コンパクトディスクを使ってスペクトルを観察しよう
実験概要 1.
コンパクトディスク(CD)を利用した簡易分光器を作成し、蛍光灯や白熱灯などの発光スペクトル(輝線スペクトル、連続スペクトル)を観察する。蛍光灯の種類によってスペクトルが異なることがわかる。この分光器では、CD板による光の回折作用を利用している。 2.
さらに、赤・緑・青・黄色のプラスチックシートの吸収スペクトルを観察し、色と光の吸収との関係を調べてみる。特に緑の吸収スペクトルは、植物の葉緑素による光合成(太陽光のエネルギーを利用したエネルギー蓄積)に関係している。 3.
学校などで設備があれば、パセリから抽出したクロロフィル溶液の吸収スペクトルや過マンガン酸カリウム水溶液の吸収スペクトルを観察する。過マンガン酸カリウム水溶液の吸収では、d-d遷移にもとづく吸収バンドが、肉眼でもきれいに3ないし5本に分かれて観察される。
4.
また、水素やヘリウムなどの放電管の光をCDに反射させて、水素やヘリウムの原子スペクトルを観察する。こうしたスペクトルの観察から科学者たちは目に見えない原子や分子の世界について知識を深めてきたことを、自らも体験してみる。
用意するもの (家庭では)不要になった音楽用CDまたはコンピューター用CD-ROM(CD-R、CD-RWでも可。ただし、暗くなる。DVDは不可)、ボール紙(工作用紙など)、はさみ、カッター、のり・両面テープ・セロテープ、蛍光灯、白熱灯、色付透明プラスチックシート(またはセロハンシート)など。
(さらに、学校などでは)水素、ヘリウムなどの放電管(スペクトル管)、過マンガン酸カリウム水溶液、パセリのメタノール抽出液など。
実験方法 [製作上の注意点] (1) スリットをできるだけ細く切り取る(0.5mm程度)。
組み立ててから、余ったボール紙でスリット幅を調節しても良い。このとき、蛍光灯のスペクトルを観察しながら調節するとやりやすい。スリットを細くするとスペクトル線がシャープになるが、全体が暗くなる。自分の好みで調整する。
(2)
光が漏れないように、のりしろ部分をきちんと貼りつける。光が漏れる部分は、外からセロテープでしっかり貼って光が漏れないようにしても良い。
[スペクトルを観察するときの注意点] (1)
太陽光は直接見ない。青空や明るい雲の光で十分。 (2) レーザーポインターの光は絶対に見ない(失明の恐れがある)
1.
DVDに掲載されている型紙のファイルをA4判用紙に印刷する。 (印刷の用紙サイズに合わせてページを縮小するオプションは解除) これを141%拡大コピー(倍率は印刷環境によって変わることがある)する。 *型紙はこちらからダウンロードできます。(prism.pdf
82.4kb) 2. 拡大コピーした型紙を工作用紙に貼り、はさみやカッターで切り抜いた後、箱型に組み立てる。 ※
DVD掲載の型紙を使うと、市販の(学校用)工作用紙1枚から2個作成できる。 3.
組み立てた分光器にコンパクトディスク(CD)を差し込むだけで完成。CDは、CD差込口から斜めに入れ、スリット側の角にあたるようにする。窓からのぞいたときCDの光っている面が見えるようにする(型紙上の図を参照のこと)。
4. まず、普通の蛍光灯のスペクトルを観察してみよう。
照明などの蛍光灯の光をスリットを通して入れ、(観察)窓からCD板状に写るスペクトルを観察する。
白色蛍光体による「連続スペクトル」(虹色)の上に、水銀原子による「輝線スペクトル」(紫、緑、オレンジ)が重なって観察される。 5.
次に、「色がきれいにみえる」といわれる蛍光灯のスペクトルを観察する。
こうした蛍光灯では光の3原色を出す蛍光体が使用されており、普通の白色蛍光灯とは違ったスペクトルが観察される。肉眼では同じように白い光を出しているように見えるのに「色がきれいに見える」のもなぜだかわかる。家庭にある蛍光灯をいろいろ見てみよう。街路灯に使われている水銀灯を見てもよい。 6.
白熱灯(電球)のスペクトルを観察する。 特に明るい線(輝線)は観測されず、虹色の連続スペクトルが見える。 7.
町にあふれているいろいろな光のスペクトルを観察するのも興味深い。 8. 次に吸収スペクトルを観察する。
白熱灯を光源として用いる。まず、赤・青・緑などの色がついた透明のプラスチックシート(またはセロハンシート)をスリットの上において、そこを通った光のスペクトルを観察する。
赤色のシートでは、青が暗くなる 青色のシートでは、緑から赤にかけて暗くなる
緑色のシートでは、赤と青が吸収され、緑色の光だけが通るので緑色に見える。 プラスチックシートを置いたりはずしたりして違いを見るとよくわかる。
このことから、「ものの色」と「光の吸収」との関係、すなわち、「補色の関係」にあることがわかる。 9. 黄色のプラスチックシートを通してみる。
黄色のシートでは、青から紫にかけて暗くなるのがわかる。
黄色は目に有害な青から紫外線にかけて吸収するので、サングラスに使える。黄色のサングラスは、色の見え方はほとんど変わらないので、信号の色もほとんど変わらず見え自動車などを運転するときに良い。
10. 褐色びんを通してみてもよい。やはり、緑の濃い部分から紫にかけて吸収があり、光に弱い薬品や食品を保存するのに適すことがわかる。
以下は、学校などで 11.
過マンガン酸カリウム水溶液(赤紫色)の溶液を作成し、シャーレなどの容器に入れてスリットの上に置き、プラスチックシートと同じようにして吸収スペクトルを観察する。
黄緑色に吸収がある。
溶液の濃度をうまく調整すると、黒い線(吸収線)が3本観測される。よく見ると、その両脇にも弱い吸収線があり、全部で5本の吸収線が観測される。
12. パセリからクロロフィル(濃い緑)を抽出して吸収スペクトルを観察する。 ※
パセリをメタノールに入れ、摂氏60度程度に加熱すると鮮やかな緑色溶液が得られる。 ※
この抽出液は保存性がよくないので、できるだけ新しいものを使うこと。 緑色のプラスチックシートを通したときと同じように、青と赤に吸収が観測される。
クロロフィルは、太陽の光を吸収して光合成を行っている。 13.
放電管があれば、そのスペクトルを観察してみる。CD分光器を使わないで、放電管の光をCDで反射させて見てもよい。
参考文献
1. 若林文高、濱田浄人、化学と教育 44巻、676(1996). 2. Fumitaka Wakabayashi,
Kiyohito Hamada, Kozo Sone, J.Chem.Educ., Vol.75, 1569-1570(1998). JCE
Classroom Activity #12, J.Chem.Educ., Vol.75, 1568A-1568B(1998)
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