(c) 2003 by the Chemical Society of Japan (2003.3. 掲載)

会長就任にあたって

Hiromichi SEYA
瀬谷 博道
旭硝子株式会社
代表取締役 取締役会議長



 このたび、日本化学会長に就任いたしました。化学産業に携わる者として、本年創立125周年を迎える本会会長の重責を果たすべく、決意を新たにしております。
 3月には、皇室、文部科学大臣、多数のノーベル賞受賞者を含むご来賓をお迎えして盛大な記念式典と記念祝賀会が開催されます。また、本年をThe Chemistry Year of Japan,2003として、各支部における化学普及事業や、英文記念誌の刊行などを計画しています。
 さて、本会は長い歴史を重ねてまいりましたが、新たな転換点にさしかかっているように思われます。まず、日本最大の化学系の学会として、今まで以上に社会的役割を果たさねばなりません。たとえば、化学物質の安全性や環境に対する影響への不安が高まる中で、専門家集団としての見解を社会に発信していく必要がありますし、これから化学を勉強しようという若い世代を育てる責務が増していると感じられます。
 次に、本会は、供給者としての立場ではなく、受益者である会員の方々の視点から、提供するサービスの質的向上を真剣に考えねばなりません。現在、本会は会員漸減傾向下で財政問題の解決が喫緊の課題となっています。私達は、限られた原資を使っていかにプレゼンスの高い学術誌を刊行できるか、あるいは魅力ある情報や研究発表の場を提供できるか、という課題に正面から取組むことにより、初めて将来が開けてくるものと考えます。このためには、若い会員の方々のご意見と感性を運営に生かしたいと思います。
 課題解決のためには、日本化学会の組織や体制についても、時代を先取りしたものに変えていくことが求められます。支部からの代表や推薦を基本とした役員人事制度や授賞制度というのは、歴史と規模に恵まれた本会ならではのシステムではありますが、これからは化学の各分野に対応した組織を日本化学会の中枢に位置づける必要があるものと考えます。学問領域に対応した部門組織の充実は、広く海外を含めた学会外への対応、さらに化学系学協会の統合再編成を考えていく上でも重要なのではないでしょうか。今までの学協会の増殖は、すなわち知の爆発でもありました。しかし、会員の皆さんは、国立大学ばかりか化学系の業界団体も統合再編成の途上にあることをご存知だと思います。化学系のすべての学会員に対するサービス向上や海外学協会との連携強化を目指し、まずは組織間の重複機能を一本化していくような努力が必要であると確信いたします。
 1年間の会長任期中に実現できることは限られているかもしれませんが、今後の日本化学会の進むべき方向を明確にするために努力する所存です。会員の皆さんが電子メール等で書き込むサイトを用意し、私が考えている問題点に対する幅広いご意見をいただくとともに、会員同士のコミュニケーションを図ろうと思います。これからの日本化学会の改革と発展を確信しております。

以 上


会長宛にメッセージをお送りください

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