(2010. 3. 1 掲載)

日本化学会ロゴ

会長に就任して:大競争・大絶滅時代における化学界の強化



Yasuhiro IWASAWA
岩澤康裕 
日本化学会会長

  電気通信大学 大学院情報理工学研究科教授・東京大学 名誉教授
 




(化学と工業3月号から)
 日本化学会会長就任にあたり,化学及び化学界の使命とあるべき姿について一言申し述べさせていただきます。生命,感染症,環境・エネルギー,資源など地球規模の大絶滅・枯渇時代に突入している現在,人類社会の持続可能な発展のために科学・技術に求められる課題と期待は高く,特にエネルギー・資源・生物種に乏しい我が国は,人材獲得を含め,国際的な大競争時代において強力な科学・技術政策・方策が必要です。科学・技術と教育・若手人材育成への投資は,我が国の将来の運命を決める極めて重要な国の中心的戦略政策であります。日本化学会は,行政刷新会議事業仕分けの審議状況と判定結果に関して深く憂慮し,大変な危機感を抱き,我が国の約33万人の科学技術関連研究者をメンバーに含む主要20学会の音頭をとり,我が国の将来に禍根を残すことのないように政府関係者への要望と声明を表出いたしましたことはご存じのとおりです。日本化学会は世界有数の化学系学会として,常に世界を先導する科学・技術と若手人材育成・教育の強化を行い,我が国の持続可能な文化的社会構築に向け,最大限の努力と責務を共有したいと思います。
 現在,我が国が抱える解決すべき国家課題は,持続可能社会の実現・健康,安全・環境とエネルギー・枯渇資源代替・情報通信システム・産業,経済,労働と雇用政策・人材確保・生活可能空間拡大など,解決が困難で深刻なものが多く,これらの解決には多角的視点からの多様な先進的研究が必要です。資源・エネルギーに乏しい我が国が先進国の中でプレゼンスを高め国際貢献を果たすことができるのは,世界を先導する科学・技術のお陰といえます。化学は,これらの喫緊の国家課題の多くに応えることができます。
 平成21年12月15日には政府の予算配分の重点項目として,少子・子育て,雇用,環境,科学・技術が取り上げられ,12月30日には閣議決定「新成長戦略(基本方針)」がなされました。その中で,戦略分野の基本方針と目標とする成果として,強みを活かす成長分野(環境・エネルギー,健康),成長を支えるプラットフォーム(科学・技術,雇用・人材)などがあげられ,科学・技術立国戦略として,科学・技術力による成長力の強化,研究環境・イノベーション創出条件の整備,推進体制の強化が謳われています。また,雇用・人材戦略として,質の高い教育による厚い人材層を作り出すとされています。我が国の科学・技術立国としての将来をまさに輝く日本にする政策・方策に期待したいと思います。この面では日本学術会議とも協力して政策提言を行いたいと思います。
 公益法人としての日本化学会の在り方を基本にして,科学・技術戦略と経営戦略を策定し,化学者・技術者と社会のために最大限貢献できるよう尽力する覚悟ですので,今後の皆様のご支援ご協力を切にお願い申し上げる次第です。


社団法人 日本化学会
〒101-8307 東京都千代田区神田駿河台1-5
Tel: 03-3292-6161
Fax: 03-3292-6318
「日本化学会」に戻る



Copyright(C); 2010, The Chemical Society of Japan